Research Abstract |
光学素子として多く用いられている石英の場合には,ドライエッチングとして化学的エッチングモードが使用できる。すなわち,表面にレジスト層を形成してフォトリソグラフィプロセスによりパターニングし,残ったレジストを保護膜として,フッ素系化合物を含有するガスにより石英をエッチングする。その後レジストを除去することにより,表面にパターンを有する石英光学素子を製作する。しかし,蛍石を光学素子とする場合には,このような化学的エッチングモードによるエッチングを行うことができなかった。その理由は,蛍石は化学的に非常に安定な物質であるため,化学的エッチングモードを発現するエッチングガスが存在しないためであった。 平成18年度においては,第一に,水蒸気導入機構の構築については,H_2O気化器とH_2O用マスフローコントローラを誘導結合型プラズマ(ICP)エッチング装置に取り付け,液体の水が気体のH_2Oとして真空中に規定の流量で供給されるかどうかを確認した。水蒸気導入プラズマの発生については,水蒸気と不活性ガスであるXeの混合ガスで誘導結合プラズマでの発生のほか,水蒸気単体でも標準的なエッチングプロセス圧力におけるプラズマ発生を確認した。 水蒸気導入プラズマと固体ヨウ素をソースとするプラズマの同時生成についても成功した。 プラズマ特性の評価については,上記で生成したプラズマを四重極質量分析器を用いて測定し,プラズマ中にH,H_2,OH,H_2O,H_3O,O_2の粒子が確認した。この内,H_3Oが確認されたことは,H_2Oの解離過程に関して重要な知見であり,宇宙空間における彗星の物理でのH_2Oの解離過程と同様の現象がプロセス容器内でも発生していると推察される。 また,発光分光分析装置を用いてプラズマからの発光分光観測を行った結果,OHからの発光が非常に強く得られた。OHは一般的に反応性が高く,ドライエッチングへの応用おいても重要な役割を担う可能性がある。 エッチング特性の評価については,エッチングレートについて実験を行い,O_2単体などとの比較や,チャンバー内のH_2Oの有無によって蛍石のエッチングレートが変化することを確認した。また,複数の材料会社の蛍石結晶をエッチングしたところ,エッチングレートやエッチング後の表面状態などが異なることが確認できた。このことは,結晶の製造方法や微量の不純物の多寡により,蛍石の結晶性が異なることを示しており,次年度計画の光学デバイスへの応用に関して有益な情報が得られた。
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