2008 Fiscal Year Annual Research Report
外来海産軟体動物2種が在来生物群集に及ぼす影響の実験的解明
Project/Area Number |
18510208
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
岩崎 敬二 Nara University, 教養部, 教授 (60278877)
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Keywords | 海洋保全 / 海洋生態 / 動物 / 外来海産生物 / 生態学 |
Research Abstract |
外来海産巻貝シマメノウフネガイCrepidula onyxが宿主に及ぼす影響の実験的解明 アメリカ合衆国原産の外来海産巻貝シマメノウフネガイCrepidula onyx(以下本種)について、仮説1:宿主である在来巻貝に付着することで摂食活動や移動行動を阻害し成長を遅滞させる、仮説2:宿主の生存と移動が本種の食物摂取量を増加させ、成長を促進させる、という仮説群を野外での寄生状況を調べつつ、室内での外来種の除去実験によって検証した。その結果・・・ 1. 野外での本種の生息状況:愛知県の三河大島で本種と在来貝類を採集し、実験室に持ち帰ってそれぞれの体長・湿重量・個体数等を計測した。在来巻貝への付着率(3回の野外調査の平均)は、アカニシ91.8%、コシダカガンガラ54.7%、イボニシ3.6%で、アカニシが最も多かった。また前2種では、サイズが大きくなるほど1個体あたりに付着していた本種の個体数が増加した。ただし付着率は、どの在来種でも7月上旬>8月上旬>9月上旬と、時間を経るにしたがって減少した。 2. 室内実験による仮説1&仮説2の検証:室内の実験用水槽で、在来巻貝コシダカガンガラの単位時間あたりの移動量を本種が付着している個体と付着していない個体でビデオ撮影によって比較すると、後者の方が有意に多かった。しかし、同じ温度・光・底質・水質条件で飼育しても、3ケ月間の生長量については両者に有意差はなかった。また、本種の3ケ月間の生長量を、コシダカガンガラに付着した個体と石の表面だけで飼育させた個体とで比較すると、前者の方が有意に多かった。以上の結果から、1:本種は、在来巻貝の移動を抑制する傾向にあるが、その成長には影響を与えていないこと、2:在来巻貝への付着は、本種の成長にとってプラスとなることが推察された。しかし、そのメカニズムの解明までには、至らなかった。
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