2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本産コイ(コイ目コイ科)のルーツ解明と保全へのシナリオ
Project/Area Number |
18510209
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
瀬能 宏 Kanagawa Prefectural Museum of Natural History, 学芸部, 専門研究員 (80202141)
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Keywords | 分子系統 / コイ / 保全 / 外来種 |
Research Abstract |
ミトコンドリアDNAに基づくこれまでの研究により、1)日本にはユーラシア大陸のコイとは遺伝的に異なる保全上重要な在来のコイが生息していること、2)日本の自然水域には、ユーラシア大陸から移入したものに由来するコイが少なからず生息していることの2点を明らかにしてきた。後者の成果から、在来系統と移入系統の交雑が懸念されるが、自然水域における交雑の有無や程度といった保全生物学的に重要な情報を得るためには、両者の核ゲノムにおける差異を明らかにする必要がある。その第一歩として、核ゲノム中に散在するマイクロサテライト座位に注目し、両系統を識別するマーカーの開発を行った。 ミトコンドリアDNA解析によって明らかとなった移入系統に関する情報(どのような系統が実際に移入されたのか等)を考慮しながら、中国、台湾、およびドイツで収集された個体を比較材料に識別マーカーを探索した結果、既出および新規に作成したマイクロサテライトマーカーにおいて、繰り返し配列の隣接領域に一塩基多型(SNP)が5つ見いだされた。これらSNP変異の分布を調べると、在来型ミトコンドリアDNAハプロタイプが優先する琵琶湖(北湖)北部では、在来型と思われるSNP変異が大部分を占め、移入型ミトコンドリアDNAハプロタイプが優先する琵琶湖(南湖)や霞ケ浦(北浦)でも在来型のハプロタイプを持つ個体では在来型と考えられるSNP変異が比較的多く検出された。このようにミトコンドリアDNAハプロタイプとの整合性から、これらのSNP変異は両系統の識別マーカーとして有望であることが示された。今後、同様な手法でこのようなSNPを増やし、さらに統計的手法を用いた有用性の検証を行う予定である。
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Research Products
(2 results)