2008 Fiscal Year Annual Research Report
戦争記憶の表象モデル構築に関する研究:戦争博物館展示の政治学的分析
Project/Area Number |
18510213
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
溝上 智恵子 University of Tsukuba, 大学院・図書館情報メディア研究科, 教授 (40283030)
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Keywords | 政治学 / 教育学 / 国民統合 / 博物館 / 国際情報交換 / カナダ:オーストラリア:イギリス |
Research Abstract |
世界三大戦争博物館であるイギリスの帝国戦争博物館(1mperial War Museum)、カナダのカナダ戦争博物館(Canadian War Museum)とオーストラリアのオーストラリア戦争記念館(Australian War Memorial)および関連するアメリカの博物館を事例として、その展示方法とコレクション形成から、戦争の「記憶」をめぐる国民への表象法を探った。具体的には、(1)世界三大戦争博物館における第1次世界大戦と第2次世界戦争記憶の表象法の比較、(2)カナダやオーストラリアといった移民国における戦争記憶の表象実態を明らかにし、国民統合の具体策の検討、そして(3)国内少数民族の戦争記憶のあり方の検討を行った。 最終年度にあたる平成20年度は、まず(1)オーストラリア戦争記念館の設立経緯およびその後の変遷を分析することにより、「オーストラリア市民」意識形成に果たした戦争博物館の役割を明らかにした。さらに(2)第2次世界大戦後のオーストラリア戦争記念館における日本展示論争を詳細に検討することにより、戦争記憶と博物館展示との関係性を考察した。植民地形成後のオーストラリアにとって、19世紀後半から第2次世界大戦前までの間、日本は仮想敵国の1つであり、強い反日感情が醸成された時期もあった。こうしたなか、第2次世界大戦において日本軍の直接攻撃を受けた経験は、戦争博物館の展示に、当然ではあるが、大きな影響を与えてきた。本研究により、戦争記憶の表象にかかる検討は、同時に海外における日本イメージの構築という側面とも密接な関係性があることを指摘することができた。 なお、イギリス、カナダおよびオーストラリアの3か国は、第1次世界大戦を契機に戦争博物館の本格的建設に着手していることに着目し、帝国戦争博物館建設にかかるイギリスの公文書を詳細に分析することにより、大英帝国臣民意識からそれぞれの国民意識へ変容していく姿もあわせて明らかにした。
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Research Products
(2 results)