2007 Fiscal Year Annual Research Report
独立期以降におけるインド農業発展の制度的要因:西ベンガル州の事例
Project/Area Number |
18510214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中里 成章 The University of Tokyo, 東洋文化研究所, 教授 (30114581)
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Keywords | 土地改革 / 農業発展 / 食糧問題 / 経済援助 / ベンガル / インド / インド・パキスタン分離独立 / オペレーション・バルガ |
Research Abstract |
インドの食糧穀物の生産量は、1960年度から2000年度までの40年間に2.4倍増加した。本研究計画は、インド農業の持続的成長を可能にした制度的要因を、米作地帯の西ベンガル州を事例として、社会経済史の観点から実証的に究明することを目的とする。また国際的要因を重視し、米国がインドの農業政策の形成に及ぼした影響の程度を検証することも、もう一つの目的である。 第2年度の今年度はコルカタで3回文献調査を行った。調査したのは、西ベンガル州知事公邸記録室、州政府土地・地租省図書室、インド国立図書館、西ベンガル州文書館の4ヵ所である。この調査の結果、1940年代の農業問題に関する資料のかなりの部分を収集することができた。同時に、40年代から土地改革が実施された1953-55年までの間の論議を通観する史料をほぼ揃えることができた。また、1980年前後に実施された「オペレーション・バルガ」と呼ばれる刈分小作人保護政策の基本資料を入手した。 これらの史料の本格的な分析はこれからの課題であるが、さしあたり注目されるのは、間接選挙で選ばれた州政府が成立した1937年から、分離独立の1947年までの10年間に、驚くべき数の農業関連法案が、主に東ベンガルのムスリム農民の利害を代表する議員によって提案されていることである。これらの議員は分離独立で東パキスタンに行ってしまう。そのことが西ベンガル州における土地改革をめぐる論議にどのような影響を与えたのか、興味深い問題である。分離独立は土地改革へ向けた圧力を和らげ、それを変質させたのではなかろうか。社会主義的なレトリックにも拘らず、インドの土地改革は漸進的にしか進まなかった。すくなくとも西ベンガルに関しては、その原因の一つに分離独立の影響を挙げることができそうである。
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