Research Abstract |
平成19年度においては,平成18年度に協力園に対する事前調査に基づいて立案したジェンダー・フリー・プログラムを実際に協力園で導入し,その効果を査定することを目標としていた。事前調査では,園の物的環境や,園の慣習として定着している園児への働きかけや保育活動などの人的環境に,男女児のジェンダー化を推し進める隠れたカリキュラムが存在していることが見出された。また,各園の特徴も散見された。各園に観察結果のフィードバックを行い,それに対するコメントや園の方針を聞いた上で,各園で可能なジェンダー・フリー・プログラムについて話し合いをもった。その結果,1園で,園児の描画活動をジェンダー化されたものからより自由度の高いものへ変容させる試み,また別の1園で,男女の分離が大きいスポーツ活動に男女が自由に参加できるようにするための働きかけを行うこと,さらに別の1園では,男性保育者の参入の意義を明らかにするための聞き取り調査を実施することになった。まず描画活動に関するプログラムは,女児が寒色や昆虫のモチーフなどを取り入れ,男児が暖色や花のモチーフなどを取り入れるようになることを目標に,ピンクとブルーの手形作り,大きな紙を用いた共同制作,図鑑による花や威虫の観察などを男女大学生の指導のもとで実施した。その結果,事前調査と事後調査において,男女児の色彩やモチーフの好みに大きな変化が見られた。次にスポーツ活動に関するプログラムは,女児が積極的にサッカーに参加できるようになることを目標に,男女大学生が約半年間にわたるサッカーの指導を行った。その結果,女児のサッカーに対する好意度が大きく上昇した。このように,男女児それぞれの不得意分野に働きかけることが重要だと考えられる。また,男性保育者に対するインタビュー調査を通して,男性保育者の存在意義と保育活動への新しい視点の導入の可能性が明らかとなり,ジェンダー・フリー保育の重要な一側面を形成していることが示唆された。
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