2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
信原 幸弘 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (10180770)
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Keywords | 基礎行為 / 生成行為 / 複合行為 / 状況依存性 / 目的 / 手段 / 身体 / 環境 |
Research Abstract |
行為の状況依存性について哲学的に考察し、次の諸点を明らかにした。 (1)基礎行為は脳と身体と環境の相互作用の所産であり、それゆえ、基礎行為の遂行に先だってその詳細をあらかじめ明確に規定しておき、それに基づいて基礎行為を遂行するというわけにはいかない。むしろ、基礎行為の遂行とともに、その各時点での身体や環境のあり方に応じて、行為の具体的な詳細が決まっていく。基礎行為は本質的にこのような状況依存的な性格を帯びているのである。 (2)このような状況依存性は、基礎行為に限らず、生成行為や複合行為も含めて、行為一般に見られる性格である。というのも、どのような行為も脳と身体と環境の相互作用の所産にほかならないからである。行為が状況依存的であることから、行為の目的や手段も状況依存的であることになる。すなわち、それらも、行為に先だってそれほど明確には決まっておらず、むしろ行為の進行とともに、その成り行きに応じて適当な手段が選択され、行為の目的も次第に明確化される。また、行為の成功・失敗の基準も、行為に先だってではなく、むしろ行為が終了したあとに完全に明確化される。 (3)生成行為や複合行為も状況依存的であるのは、有限の知能しかもたない人間にとって、自身の欲求や環境のあり方を行為に先だって完全に把握し、最善の目的とそれを達成する最善の手段を選択することが必ずしも可能ではないからである。人間は、部分的な知識に基づいて、とりあえず行為を開始し、その成り行きに応じて、目的や手段を調整していくしかないのである。
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