2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
信原 幸弘 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10180770)
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Keywords | 状況依存性 / 意図 / 実践的推論 / 手段 / 目的 / ダンスの状況依存性 / 相互作用主義 |
Research Abstract |
行為の状況依存性を発展させて、意図と実践的推論の状況依存性について、次の点を明らかにした。 (1)従来の哲学的行為論では、行為はその目的と手段が行為に先だった実践的推論によってあらかじめ明確に定められており、したがって行為の成功・失敗の基準もあらかじめ明確に定まっているとされた。しかし、実際に我々が行う行為の大半は、そのような先行する明確な意図のもとに行われるのではなく、むしろ行為の進行とともに、その成り行きに応じて適当な手段が選択され、行為の目的が次第に明確化されていくこと、従って行為の成功・失敗の基準もむしろ行為が終了したあとに最終的に定められることを明らかにした。このような目的と手段の状況依存性から行為の意図の状況依存性を導いた。 (2)我々は多くの場合、自分の欲求と信念のすべてを考慮して最終的な意図を形成するという完全な実践的推論を行為に先だって行うのではなく、とりあえず適当な欲求と信念に基づいて行為を開始してしまい、行為の進行とともに徐々に実践的推論を行っていくことを明らかにし、実践的推論の状況依存性を確立した。 (3)あらかじめダンスの内容を決めておくのではなく、その場の状況(舞台装置や観客)に応じて自在にダンスを繰り広げていくダンサーのパフォーマンスを分析することによって、ダンスにおける意図と実践的推論の状況依存性を解明した。 (4)基礎行為および生成・複合行為の状況依存性およびそのような行為における意図と実践的推論の状況依存性は、脳と身体と環境の相互作用から行為が形成されるという相互作用主義的観点からすれば、当然の帰結であることを明らかにした。
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