2008 Fiscal Year Annual Research Report
感覚・知覚・概念--知覚の「生態学的現象学」の可能性
Project/Area Number |
18520004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 純一 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40134407)
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Keywords | 知覚 / 感覚 / 現象学 / 生態心理学 / メルロポンティ / 照明 |
Research Abstract |
本年度はまず、知覚論の全体像をとらえるために、アリストテレスの知覚論にまでさかのぼりその特徴を明らかにすることを行った。アリストテレスは当時の自然哲学者の知覚論を「接触モデル」を持つものとして批判し、「媒体モデル」といえるような見方を提示した。この見方は、その後、デカルトを代表者とする近代科学における見方の成立によって見失われたが、現象学的観点によって再評価されたとみなすことができる。その代表がメルロポンティである。このような観点から、メルロポンティの『眼と精神』を題材にして、視覚における照明現象の意義をアリストテレスの見出した「媒体」・に相当するというテーゼにまとめ、「照明の現象学」という論文を書き、国際学会で発表した。 研究協力者の小口峰樹は知覚の概念性をめぐる議論を最近のミルナーやグッデールらの脳科学的知見を踏まえて解明した。とりわけ、アルヴァ・ノマらのエナクティヴ・アプローチの見方への批判的観点を提出した。 さらに最後に、3年間の研究の総括の意味も込めて、2009年3月5目から7日にかけて、研究協力者の小口峰樹、ならびに連携研究者の染谷昌義、高千穂大学・準教授、池上高志東京大学・教授とともに、内外の認知科学者や複雑系科学に関する科学者、そして人工生命の研究者などを招いた国際ワークショップを開催した。参加者は、サセックス大学のDiPaolo教授を含め、オーストラリア・グリフィス大学Keane教授、そして理化学研究所の谷研究員など総勢14名に及ぶものであった。このワークショップでは、科学者と哲学者が知覚にかかわる実験と理論の最近の成果を踏まえて、共通の話題をめぐって集中的な討議を行うことができた。
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