2008 Fiscal Year Annual Research Report
存在論をてがかりとした道元の思想構造に関する総合的研究
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18520007
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
頼住 光子 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (90212315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高島 元洋 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (90127770)
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Keywords | 道元 / 親鸞 / 存在論 / 仏性 / 大乗仏教 / 東アジア仏教史 / 空 / 『正法眼蔵』 |
Research Abstract |
本研究は、道元の思想の根幹にある存在論を、自己概念や、世界観と関連させて明らかにすることによって、道元の思想の構造を総体として解明することを目指すものである。 特に、本年度は、昨年度に引き続き、道元の主著である「正法眼蔵」の中でも思想的に重要な巻であり、存在論を検討するのにもっともよい題材のひとつである「仏性」巻や「諸悪莫作」巻「現成公案」巻、そして今年度新たに「摩訶般若波羅蜜」巻について検討を行い、親鸞の存在論との比較を行った。(親鸞については、一般に親鸞の思想を検討する際に使用される『歎異抄』のみならず、難解をもって知られる『教行信証』についても研究した)その際、初年度に行った道元と、親鸞の仏性論についての検討と、さらに、昨年度の両者の善悪論について検討を踏まえ、東アジア仏教史における両者の意義、大乗思想の根幹である空思想の徹底という観点から、両者の関係を解明し、その成果の一部については、論文発表、口頭発表を行った。 一般に、道元と親鸞というと、それぞれ曹洞宗と浄土真宗という別々の宗派の宗祖として理解され、また自力門と他力門というように、対照的な教義をもつととらえられがちであるが、本研究においては、両者を大乗仏教の透徹した思想家という観点から研究を遂行した。このような視点は、従来、宗学者(その宗派の信仰を前提とした教義研究者)中心に遂行されてきた仏教研究においては、貴重な論点を提供するものであり、大乗仏教思想の日本的展開という、アジア仏教思想史における日本の仏教思想の位置を確定する上でも、重要な研究である。昨年度に引き続き、今年度も、その方向性にそって、道元と親鸞の思想の比較研究が遂行され、その一端が発表されたことの意義は大きなものであるということができる。
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Research Products
(12 results)