2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520015
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松井 富美男 Hiroshima University, 大学院・文学研究科, 教授 (60209484)
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Keywords | 老人問題 / 生命倫理 / 個人の自律 / 中国 / 日中共同研究 / 老人ホーム / 文化 / 老人観 |
Research Abstract |
本年度は、主に中国人研究者の協力を得て中国の老人問題の現状について調査すると共に関連資料を収集した。 2007年7月に広島大学応用倫理学プロジェクト研究センター例会主催のシンポジウム(「ジープのKonkrete Ethikをめぐって」)において生命倫理の方法論に関する研究報告を行った。これは、とりわけ「老い」を生命倫理の観点から研究する際にも必要となる、個人の自律に言及したものである。 2007年9月中旬に中国重慶市の長江師範学院を訪問した。そこで本研究の中国側協力者の中心人物である王官成教授に会って老人問題に関する日中共同研究の進め方について協議した。また同教授め案内で「重慶市?陵区社会福祉院・老年公寓」を訪問し、同副院長から中国老人の現況について説明を受けた。その後同院内を見学して、ある女性の入居老人から本院での生活や彼女自身の境遇等々についてインターヴューをし、いわゆる老人ホームで生活する中国老人のサンプルを得ることができた。その際に通訳を引き受けてくれたのは長江師範学院の日本語講師王艶玲講師であった。彼女にはこれを機に中国側の研究協力者になってくれるようにお願いし快諾を得た。また重慶滞在中に長江師範学院及び西南政法大学において本研究に関連する一般講演(演題「日本文化の今昔盛衰-老い文化の日中比較研究の手引きとして-」)を行い、広く中国人に老人問題が日本だけでなく早晩中国でも深刻になることを喚起した。 2007年11月下旬に中国側の資料を提供してもらうために王艶玲講師を日本に招聘した。同講師からは、中国の一般家庭における老人問題の現況について報告を受けた。またその際に日中相互の文化からみた老人観の比較検討も行った。これにより伝統的に「神人」のイメージを併せもつ日本の老人観が、中国の伝統文化、とりわけ神仙思想に由来することを文献等から明らかにした。 2007月12月中旬に長江師範学院を訪問して中国人研究者グループと本年度2回目の研究会合をもった。その席上研究の進捗状況について中国側から報告を受けた。また王艶玲講師の案内で重慶市在住の二人の老人(一人は独居の女性老人、もう一人は家族と同居の男性老人)に会って、老人ホームとは異なる一般家庭における老人の生活実態について知見を得た。 2008年3月に上述の研究成果を学術雑誌「ぷらくす」において公表した。
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Research Products
(3 results)