2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 隆一郎 Kyushu University, 人文科学研究院, 教授 (60128048)
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Keywords | 人間 / 自然・本性 / ダイナミズム / 教父 / ギリシア教父 / 善 / 神 / 自己 |
Research Abstract |
今年度は、証聖者マクシモスの主著『難問集(ナンビグア)』を中心として基本的な読解・探究を行った。それは、「《在ること》と《善く在ること》とのダイナミズム」(哲学論文集)、第四十三輯、二〇〇七年)、および「アレテーの成立と神人的エネルゲイア-脱自的な愛の根底-」(エイコーン、第三十六号、二〇〇七年)などに結実している。 マクシモスの基本把握によれば、有限な自然・本性(ピュシス)は完結して「在る」というよりは、無限なる存在(無限性そのものたる神)に向かって開かれており、根本的に「動き」のうちにある。とりわけ人間は、自らの自由・意志の働きを介して、単に「在ること」から「善く在ること」(アレテー)へと形成される可能性を有しているが、そこには「在る」と「善い」(存在と善)の問題が凝縮しているのである。先述の論文の前者は、アレテー(徳、魂の善きかたち)の成立に関わる人間的自由・意志と超越的な善との微妙な関わり、そしてそこに介在する悪と罪との問題を、ニュッサのグレゴリウスと証聖者マクシモスの文脈に即して吟味したものである。 ところで、そうした問題位相には、何らか超越的な働き(エネルゲイア)が現前しているが、とりわけ人がそれに対してよく応答し聴従してゆくか、背反して有限性に閉じこもり、ひいては非存在のしるし(=罪)を己れに招来させてしまうのか、ということは、人間という存在者が自らの本性を開花・成就させるか否かということであった。その際、われわれのうちに行為の根拠として働く超越的善の働き(神的エネルゲイア)は、その主体たる「神性と人性とのヒュポスタシス的結合」(受肉のキリスト)を指し示している。とすれば、「アレテーの成立」の可能根拠を問うことは、「神人的エネルゲイアへの聴従とその受容」という中心的場面に関わってくる。論文の後者は、その間の微妙な関係性を問い披こうとしたものである。
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Research Products
(3 results)