2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 隆一郎 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 教授 (60128048)
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Keywords | 証聖者マクシモス / 教父 / 人間 / 神化 / 徳(アレテー) / 善 / 存在 / 神 |
Research Abstract |
東方教父の伝統は,ヘブライ・キリスト教の伝統を礎として,古代ギリシア的諸伝統を受容し,ある拮抗をもとにそれらを超克していったものであり,西洋の思想・哲学の大きな源泉であった。 本研究は,そうした東方教父の伝統の集大成者と目される証聖者マクシモスの哲学・神学の中心的場面を解明することを目的として為されたものである。 そして,この7,8年間に10余りの論考を学界誌,共著などに発表してきたが,昨年はそれらを吟味し直し,敷衍して一書にまとめる作業を遂行し,2009年2月,『人間と宇宙的神化-証聖者マクシモスにおける自然・本性のダイナミズムをめぐって-』(知泉書館)を上梓した。 そこにおいては,「自然・本性の開かれた構造」,「<善く在ること>(アレテー)の成立をめぐって」,「人間的自由と善」,「情念と自己変容」,「身体性の問題」,「他者」,「アレテーの統合と愛」,「エクレシアの諸相」,「受肉と神化の問題」といったテーマが各々の章において論じられ,我が国ではじめての証聖者マクシモス研究となっている。 それは,東方教父,ビザンティンという大きな思想潮流についての研究史にとって,一つの基礎的な成果であるとともに,現代における人間と自然とをめぐるさまざまな問題に対して,それらを問題の根底から問い直し吟味するための根本的な視点を与えるものともなるであろう。
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Research Products
(1 results)