2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
亀喜 信 大阪府立大学, 総合教育研究機構, 助教授 (20244618)
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Keywords | シティズンシップ / 市民教育 / 公共性 |
Research Abstract |
本研究は、フランスの中等学校(コレージュ)における市民教育との対比を通じて、日本の中等学校における公民科教育の問題点を探ることである。 フランスのコレージュにおける教育は4年間にわたり、そこでの市民教育の目標は「人間と市民との育成」にある。日本の中学校での公民科教育は3年生の1年間のみだが、コレージュでは4年間にわたり、「人格」と「市民」という根本的な概念にっいて、様々な観点から繰り返し学び、理解を深めるよう配慮されている。日本では、中学1〜2年のあいだに日本の歴史と地理を学び、それから公民を学ぶというプログラムになっている。これは「我が国の国土や歴史に対する理解と愛情」(『中学校学習指導要領(社会編)』)を育成することが、日本の社会科教育の大きな柱になっていることに由来すると思われる。フランスの市民教育では、市民の権利や平等とならんで責任や連帯が教えられるが、「国土や歴史に対する愛情」を教えるという発想は見られない(環境や文化遺産を大切にするという教育は含まれている)。これは共和主義の立場を取るフランスと、その立場を取らない日本との違いを反映していると思われる。 またフランスの市民教育では判断力を養うことが目指され、そのために批判的精神の育成と討論の実践が重視されている。日本の『中学校学習指導要領(社会編)』でも、公正に判断する能力や態度の育成が目標として挙げられているが、そのために具体的どのような教育実践を重視するのかが述べられておらず、理念を掲げるにとどまっている。さまざまな考え方の人と討論し、その考えを理解し、また自分の考えを適切に提示し、説得するための能力は、民主主義の国家における主権者である公民(フランスでは市民)にとって必要なものであるはずである。
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Research Products
(1 results)