2007 Fiscal Year Annual Research Report
山王神道における神仏関係思想の原理に関する倫理学的基礎研究
Project/Area Number |
18520030
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Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
上原 雅文 University of East Asia, 人間科学部, 教授 (30330723)
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Keywords | 仏法 / 神 / 神道 / 神仏習合 / 山王神道 |
Research Abstract |
今年度は,最澄思想からの展開に留意しつつ,主に慈遍とそれ以降の山王神道関係文献の読解を行った。 1.昨年度からの継続で,『耀天記』中の「山王事」を読解し,慈遍以前の山王神道の教説的な知,および教説以前(もしくは教説と併存)の物語的な語りにおける知の様態について考察した。あわせて『耀天記』に記述のある諸儀礼のあり方と意味について考察した。これらを通じて,教説・物語・儀礼の3者における,それぞれの知の様態と神仏関係思想との関係を原理的に考察した。 2.慈遍の著作では,まず『旧事本紀玄義』『豊葦原神風和記』を読解した。慈遍は,天地開闢から始まる新しい日本神話を創作しているが,そこに見られる神と仏とめ関係思想を整理した。そこで主に考察した問題点は,慈遍はどうして神本仏迹へと思想形成を行ったのかという点であり,またそれが倫理思想としてどのような新しい意味を持ったかという点である。まだ考察の途上であるが手がかりとして『審鎮要記』に見られる「性等神」「覚等神」「邪等神],あるいは他の書に見られる「法性神」「有覚神」「実迷神」などの神分類の意味を考察し,神仏習合思想の中で神がどのように位置づけられたのかについて,歴史的変遷に留意しつつ整理した。仏法と神との関係は,日本においては普遍と特殊との関係思想であるが,人間の理知と感性・欲望との関係思想であり,神本仏迹への変容は重要な意味を持つ。その観点から,来年度も引き続き考察を進める。 3.『山家要略記』(続天台宗全書所収)を読解した。菅原信海「『厳神霊応章』考」(『山王神道の研究』所収)の内容を再検討し,「厳神霊応章」と「三宝住持集」との関係,および成立時期について考察した。その中で特に,最澄までさかのぼる内容があるかどうかについて検討した。現在,山王神道における神仏関係思想(倫理思想)を,最澄思想からの展開過程として整理しつつある。
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