2006 Fiscal Year Annual Research Report
『大戴礼記』に残存する『曾子』十篇についての基礎的研究
Project/Area Number |
18520037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
末永 高康 鹿児島大学, 教育学部, 助教授 (30305106)
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Keywords | 曾子 / 大戴礼記 / 内礼 / 儒家思想 |
Research Abstract |
本申請研究の基礎作業である『曾子』十篇の訳注作業については、「孝」を中心テーマとしない立事篇、疾病篇および制言の上、中、下篇の計五篇について、その訳注作業をほぼ終えている。『上海博物館蔵戦国楚竹書(四)』所収の『内礼』の訳注作業は継続中であり、伝世文献に残された曾子言の収集および分析については、先秦文献の範囲での収集をほぼ終えたところである。」以上の基礎作業と平行して本年度は立事篇を中心として『曾子』十篇全体の構成について初歩的な考察を行った。その結果得られた知見は以下の数点にまとめられる。 1、『曾子』十篇は、その形式から二つの部分に分けられる。一つはいくつかの短章を並べたものの頭に「曾子日」を冠して一篇としたものであり、一つは弟子や子供達との対話の形にして一篇を構成しているものである。 2、前者に属する諸篇は、より大きな「曾子語録」の中から引き抜かれて構成されたものと考えられ、その分篇の時期は『筍子』大略篇に遅れる可能性があるが、素材となった「曾子語録」が戦国期に遡ることは『内礼』により証することができる。 3、前者に属する諸篇は、「孝」を主題とするか否かにより二分され、「孝」を主題としない立事、制言の篇の内、後者は無道の世に対する君子の処し方を中心に、前者は世の有道無道にかかわらないあるべき君子のふるまいを中心に曾子言を集めてきたものである。 4、文体から、立事篇は、楚簡の『緇衣』よりも古いものと考えられる。 5、立事篇前半部の短章は、孔子の思想を祖述するものであり、『論語』子張篇の弟子言に近い。 また、内容的に『論語』『孟子』等の曾子言と矛盾を来たすものではなく、曾子その人の言を伝えた資料とほぼ見なし得る。ただし立事篇後半部の比較的長い章はこの限りではない。
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Research Products
(1 results)