2007 Fiscal Year Annual Research Report
『大戴礼記』に残存する『曾子』十篇についての基礎的研究
Project/Area Number |
18520037
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
末永 高康 Kagoshima University, 教育学部, 准教授 (30305106)
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Keywords | 曾子 / 大戴礼記 / 内礼 / 孝 |
Research Abstract |
本年度は孝思想を中心にして『曾子』十篇の分析を行った。新出土資料の『内礼』と曾子事父母篇等の重複部分の検討を中心にして、『曾子』十篇のうち孝を主題とする諸篇についての分析を行い、『内礼』およびこれらの諸篇がともに「曾子語録」に由来し、曾子の孝思想を伝える可能性が高いことを導いた。これは『論語』『孟子』を根拠にして曾子と孝との関係を切り離してきた従来の疑古的な見解を改めるものである。また、「曾子語録」に直接由来し後人による加工の比較的少ないと想定される曾子本孝、曾子立孝の両篇と、『内礼』の出現によりその素材の由来の古いことが示された曾子事父母篇首章を主たる材料として曾子の孝思想の再構成を試みた。この試みにおいては、曾子の孝思想の基底に、人と人とは「忠」(相手に対するまごころ)によって結びつかなければならないという曾子の確信があることを明らかにすることにより、従来の研究においてしばしば問題とされた、親への服従と親への規諫、自己の身体保全の要請と戦場に於ける勇敢さの要請といった矛盾点が、見かけ上の矛盾に過ぎないことを示し、より統一的な思想の再構成を行った。また、所謂「忠孝一致」についても、この曾子の確信を前提にすることによってより十全な理解が得られることを示した。 なお、実施計画に記した曾子十篇の訳注作業については、曾子天円の一篇を除く他の九篇の訳注を一通り終えており、他文献に残された曾子言の収集作業についても、後漢までの文献についての調査を終えている。『内礼』の訳注作業については継続中である。
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Research Products
(1 results)