2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
種村 隆元 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 助手 (90401158)
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Keywords | インド密教 / carya / Abhayakaragupta / Amnayamanjari |
Research Abstract |
研究補助初年度となる平成18年度はアバヤーカラグプタ著作の『教説の穂』carya章(第20章)の和訳註の作成に取り掛かり始めた.根本経典である『サンプトードゥバヴァタントラ』の当該章(第5儀軌第4章)の暫定的なサンスクリット語のテキストに関しては,新たにカルカッタの王立アジア協会所蔵の貝葉写本のフィルムを入手し,既存の作成済みテキストにcollateすることで,いくつかの箇所を改善することができた.また,関連文献であるパドマヴァジラ作の『秘密成就』,アナンガヴァジラ作の『智慧方便決定成就』,アールヤデーヴァ作の『行集合灯明』,ラトナーカラシャーンティによる『ヘーヴァジラタントラ』への註釈『真珠鬘』,カマラナータによる同タントラへの註釈『宝鬘』,クリシュナの同タントラへの註釈『ヨーガの宝環』などの読解を行った. 『教説の穂』が註釈する『サンプトードゥバヴァタントラ』のcarya章(第5儀軌第4章)は,『ヘーヴァジラタントラ』carya章(第I.vi章)の詩節をかなりの部分借用している.アバヤーカラグプタは『教説の穂』においても,その根本経典同様に,前述の『真珠鬘』『宝鬘』といった『ヘーヴァジラタントラ』の註釈書に依存している,すなわちそれらの註釈書の文章を借用している部分が見られることはすでに指摘されているが,今回改めたに『教説の穂』の当該章の最終部分,すなわち根本経典の最終詩節への註釈が終わり,根本経典の当該の章で説かれている諸々の実践が,手の込んだ行いが絶対的になくなった実践(nisprapancacarya)であることを説明するに際して,かなりの部分をアールヤデーヴァ作の『行集合灯明』に依存して,すなわちその文章を借用して議論を展開していることが明らかになってきた.
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