2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
種村 隆元 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (90401158)
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Keywords | インド密教 / carya / Abhayakaragupta / Amnayamanjari |
Research Abstract |
研究補助二年目となる平成19年度は,引き続きアバヤーカラグプタ著作の『教説の穂』carya章の和訳註の作成および充実を図った.前年度から解読を始めている関連文献であるパドマヴァジラ作『秘密成就』,アールヤデーヴァ作『行集合灯明』,ラトナーカラシャーンティの『ヘーヴァジラタントラ』に対する註釈『真珠鬘』,カマラナータによる同タントラへの註釈『宝鬘』と比較考察から下記のことが浮かび上がってきた. caryaには密教の入門者が遵守・実行すべき決まりごとしての側面と,その実行を通して非密教の実践よりもより迅速に無分別智,すなわち概念的思考を離れ成就を得るところの実践という二つの側面がある.後期密教文献の中でも最初期の文献である『秘密成就』に説かれているcaryaは「秘密行」と呼ばれる誓戒行で,内容は「狂人の誓戒」と呼ばれ,行者は狂人の振る舞いをして、意図的に不浄物の摂取を行ったりする.これはシヴァ教文献に説かれる「狂人の誓戒」と同内容のもので,もともとは急進的なシヴァ教行者が行っていた実践が仏教側に取り入れられたものである.仏教側は,このような不浄物の摂取等を「浄・不浄」という概念に見られるような,概念的思考を迅速に離れるためであるという理由付けをするようになった.それ故,caryaには誓戒行としての側面と,脱概念的思考のための実践としての側面との2つをもつようになったと考えられる.アバヤーカラグプタは,おそらくcaryaのこのような二面性を意識した上で,自らの議論を展開させていると考えられるのである.
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Research Products
(1 results)