2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
種村 隆元 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (90401158)
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Keywords | インド密教 / carya / Abhayakaragupta / Amnayamanjari |
Research Abstract |
研究最終年度となる平成20年度は,アバヤーカラグプタ作『教説の穂』carya章の和訳註の充実を図った,インド密教におけるcaryaはシヴァ教のそれをモデルとしているが,従来の入門者が遵守すべき苦行的実践という側面に加えて,それを通じて無分別智,すなわち概念的思考を離れた状態に迅速に至る手段としての実践という側面を持つに至った.アバヤーカラグプタがcaryaのこのような二面性を意識して議論を展開していることは先に報告した通りであるが,インド密教では後者の側面の方が強調されてくるようになる.例えば,Samvarodayatantraの第21章では,シヴァ教のカーパーリカ的な誓戒行,「狂人の誓戒行」,「不動の誓戒行」の3種類を説いているが,シヴァ教の実践をモデルとした二つの実践の上に「不動の誓戒」を置き,この「不動」を「心が動かないこと」としている.またジュニャーナシュリーは『金剛乗に関する二つの極端の排除』において,密教のcaryaは,その安楽的な実践と外的所作を離れた実践故に実践者の心を散乱させることなく,また不浄物の摂取という実践により概念的思考を迅速に離れることができ,この点において非密教の仏教に優ると主張する. 本研究においては,このように,シヴァ教の実践をモデルとするcaryaは,概念的思考を離れる実践として仏教的な色付けをされるとともに,それがシヴァ教的な実践よりも優れたもの,あるいは非密教の仏教の実践よりすぐれたものと位置づけられるようになった過程がおぼろげながらも見えてきたことに意義がある.今後はより一層の関連文献の精査により,この過程を詳細に描き出すことが課題になると言えよう.
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Research Products
(3 results)