2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520047
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
佐々木 閑 Hanazono University, 文学部, 教授 (40225868)
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Keywords | 婆沙論 / 説一切有部 / アビダルマ / アディカラナ |
Research Abstract |
本研究は二方向の作業によって進められる。一つは、漢訳として残る三本の「婆沙論」の詳細な比較対照表を作成し、そこに含まれる、引用経典、引用論書、緒論師の名称と主張内容などの情報を網羅的に調査し、膨大な量のゆえに従来手つかずであった「婆沙論」研究を、すべての研究者に対して開かれたものにすること。もうひとつは、「婆沙論」の中に現れる「論争」すなわち「(諍アディカラナ)の概念に関して、律文献から、その起源を探り、その延長として、「婆沙論」の中に見られる大乗的記述をめぐる、仏教世界の諄いの状況を解明し、大乗成立の歴史背景を解明するというものである。 平成19年度の作業により、「婆沙論」三本の比較対照表の情報はすべて収集した。特に、量的な問題で後回しにしていた、新婆沙と旧婆沙の対照作業が完了したことは重要である。およそ四千五百か所にのぼる相違点をすべてチェックし終わり、あとは、これを、クリアーな表として整える作業が必要である。ここれにより、三本の漢訳を即座に対象することが可能となるので、その後の情報収集作業が飛躍的に精密化かつ効率化されることになる。本年度は、そういった作業に着手する。 一方、アディカラナ研究の方に関しては、平成19年度に、パーリ律中のアディカラナの用例に関しては調査を終え、波羅提木叉条文のアディカラナと、それを注釈する経分別中のアディカラナで、意味にずれがあるという重要な事実を指摘した。今後は、ここを基盤として、律文献におけるアディカラナの変遷過程を一気に解明する希望が見えてきたので、本年度は、その作業を行い、論文として発表する予定である。
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Research Products
(2 results)