2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520058
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宮本 要太郎 Kansai University, 文学部, 准教授 (10312779)
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Keywords | 宗教学 / 聖伝論 / 教祖研究 / 民衆宗教 |
Research Abstract |
新しい宗教運動の創始者が広く民衆の支持を集めるのは、彼ら/彼女らの、民衆の生活に即した平易な言葉による教説と、直接的な救済のわざによるものであるが、創始者達がこの世を去った後もその宗教運動が民衆によって担われ続けるためには、「教祖」の創出がしばしば決定的に重要となる。その契機の一つが教祖伝である。教祖は民衆に新しい宗教的世界を開示するが、それが可能であるのは「教祖」を中心とする「記憶の共同体」が存続する限りにおいてであると言える。教祖伝においてカリスマの委譲がどのように描かれているかは、教祖伝に内在する政治的力学を解明する上でも重要である。また、教祖伝の執筆、編纂、ならびに刊行をめぐる経緯も、教団の政治性を克明に物語る。天理教や金光教など歴史上多くの教祖伝を有する教団においては、これらの教祖伝群の誕生のいきさつは、信仰のダイナミズムを考える上でも看過できない。教祖伝が単に教祖個人の物語でなく、そこに家族や直信を含めさまざまな人物が描かれている物語であるからこそ、教祖の宗教的世界は民衆にとって受容可能なものへと転化する。その背後に超越論的なプロットを読み込むことを可能にするのが聖伝の宗教的構造である。 本研究は、複数の新宗教教団における教祖伝を比較してかかる聖伝の宗教的構造を少しでも明らかにすることを主たる目的とする。平成20年度は、研究の最終年度として、理論的な考察をさらに深めつつ、4月にロンドン大学東洋アフリカ研究所(SOAS)の日本宗教研究センターにおいて研究の一端を発表し、建設的な質疑応答を体験した一方で、最終的な研究報告書作成に向け、平成19年度に日本宗教学会で実施したパネル「『民衆宗教』研究の最前線」(本研究代表者が代表者)に参加したパネラーと、それ以降も引き続き意見交換を実施する中で各パネラーに論文を依頼し、それらを編集して本研究の報告書の一部とした。
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