2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520060
|
Research Institution | The Eastern Institute |
Principal Investigator |
鈴木 一馨 The Eastern Institute, 研究員 (50280657)
|
Keywords | 風水 / 日中交流 / 禅宗 / 江西派 / 中世 / 天童寺 / 永平寺 / 景観 |
Research Abstract |
本年度は(1)13世紀において日宋・日元間を往来した僧侶全般に関する調査、(2)彼等が開創した寺院の調査、(3)浙江省・安徽省・江蘇省における禅宗寺院の調査を行なった。 このうち僧侶の調査については、前年度に引続き諸僧の著述から風水関係用語を検出することを試みたが、特にそれを匂わせるものの検出に至らなかった。この作業は、禅宗寺院空間が禅思想の体現としてある一方、江西派風水の思想が禅思想の姿を借りて現出していることの具体的証明を目指すもので、今後さらなる調査が必要となった。僧伝の分析では昨年同様博多と浙江省一帯との往来が主となっていることが判ったのみであるが、これについては13世紀当時の浙江の風水の状況を丹念に調査し、浙江内での地域差や用途による流儀の違いなどを考慮する必要性が新たに浮かび上がってきた。 国内での寺院の調査は福岡において行ない、栄西開創とされる東林寺、円爾弁円開創とされる勝福寺、南圃承明開創とされる興徳寺の三ヶ寺の景観調査を行ない、いずれも山丘で囲まれた景観を有していることを確認し、江西派特有の囲繞空間の意識が働いている感触を得た。 空間分析については中部大学の渋谷鎮明教授・山本貴継准教授、富山芸術工科大学の浦山隆一教授とのディスカッションを通して、景観の類似性の基準をどこに置くべきかの検討を行なった。これは観念的な景観認識を排除するために重要な検討であるが、江西派風水書の景観認識がどのようなものであったのかの検討が必要であり、それとの整合を図るべきとの意見を得た。 浙江省・安徽省・江蘇省における調査では、寧波の天童寺・阿育王寺、杭州の霊隠寺などを中心に、日本禅宗と関係のある寺院の景観調査を行なった。特に道元の滞在した天童寺の伽藍構造が傾斜地に階段状に配置され、また回廊で密接に結ばれている点などは、その道元が開創した永平寺とよく似ており、両寺の比較検討をさらにすることによって、禅宗とを媒介とした江西派風水の受容がより明確になるのではないかと考えられる。
|