2006 Fiscal Year Annual Research Report
イメージ分析に対する生命形態学の影響をめぐる思想史的研究
Project/Area Number |
18520062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 純 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10251331)
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Keywords | 思想史 / 美学 / イメージ / 形態学 / 進化論 / ヴァールブルク / ダーウィン / ヘッケル |
Research Abstract |
本年度は、1.チャールズ・ダーウィンによる進化論思想やその図像ダイアグラムの利用が、イコノロジーの創始者アビ・ヴァールブルクに与えた影響の解明、2.「個体発生は系統発生の短縮された、かつ急速な反覆である」という生物発生法則を中心としたヘッケルの思想が、同時代および20世紀初頭の文化科学の方法論に及ぼした影響の考察、という2点について研究をおこなった。 前者については、ダーウィンの『動物と人間における感情表現』をヴァールブルクがどのように受容し、のちの「情念定型」の概念につながるどんな感情表現のメカニズムをそこに読み取ったのかを、彼の著作やヴァールブルク研究所に残された自筆のメモなどから分析した。またこれらと合わせ、1888年から1903年にかけてヴァールブルクが構想し、メモの状態でしか残されていない「一元論的芸術心理学のための基礎的断章」の理論的展望を再構成し、美学、美術史を生物学的に基礎づけようとしたヴァールブルクの思想における「一元論的芸術心理学」が、どのような思想史的背景をもって構築されようとしていたのかを検討した。 後者に関しては、ヘッケルの多様な活動全体にわたる業績のなかから、彼の思想が時代的コンテクストのなかでなぜ多大な影響力をもちえたのか、という点の解明のために、文化科学におけるヘッケル思想の受容過程にとくに注目して思想史的な考察をおこなった。その際、ゲーテ的形態学とヘッケル思想との関係、および先の「芸術心理学」構想前後におけるヴァールブルクのほか、とりわけ形態学的方法が多方面で再評価された1920〜30年代におけるヘッケル思想受容の動向を重点的に調査した。また、文化科学に対する進化論思想の影響を正確に理解するため、今日の生態心理学や生物系統学の研究動向についても調査をおこなった。
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