2007 Fiscal Year Annual Research Report
イメージ分析に対する生命形態学の影響をめぐる思想史的研究
Project/Area Number |
18520062
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 純 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (10251331)
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Keywords | 思想史 / 美学 / イメージ / 形熊学 / 進化論 / ヘッケル |
Research Abstract |
本年度は、多種多様な形態の生物や発生過程の生命の図像を数多く含んだヘッケルの著作におけるイメージの利用と、同時代以降の造形芸術の動向(アール・ヌーヴォーなど)やイメージをめぐる文化科学的研究における図像表現との関係の分析をおこない、20世紀後半以降の理論的動向、とりわけ進化・発生生物学と文化科学の境界領域で展開されてきた研究(ゲーテ形態学やヘッケルの理論を独自に咀嚼して展開された三木成夫の生命形態学、とりわけそこで「おもかげ」と呼ばれている原型的イメージをめぐる理論や、ジョージ・キューブラーの『時のかたち』(1962)における事物の形態変化の歴史理論など)の総合的な比較検討のほか、そこで集約された方法論の将来的可能性を考察した。 その過程で、アール・ヌーヴォーにおける装飾と同時代の神経病理学との密接な関係性に認められる生命イメージの通底性のほか、精神病理学者シャーンドル・フェレンツィに対するヘッケル思想の影響などがあらたな論点として見いだされた。ヘッケルからの直接的な影響がない分野でも、生命論における形態学的な思考は多くの反映をとどめており、本研究の中間的な成果を盛り込んだ単著である『都市の詩学』では、イタリアの建築家アルド・ロッシをめぐる建築・都市論から、写真論(畠山直哉論および森山大道論)、映画論、神話学、人類学、民俗学、詩学に及ぶ諸領域を踏査して、「波打ち際」のイメージによって象徴されるような、こうした思考のトポスを浮き彫りにしている。
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Research Products
(4 results)