2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520068
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
木原 志乃 Kokugakuin University, 文学部, 准教授 (10407166)
|
Keywords | 古代ギリシア / 哲学史 / 医学史 / ヒッポクラテス / アリストテレス / 生命論 |
Research Abstract |
古代ギリシア医学思想において、身体と精神の相関性の脈絡の中で語られはじめたメランコリア概念について、その思想史的展開をテキストに基づきながら考察を深め、それとともに「病い」とは何かという本質的な問題を検討したのが本年度の研究成果である。 古代ギリシア哲学におけるメランコリア論として、ヘレニズム・ローマ期およびルネサンス期のメランコリア論へと多大な影響を与えたテキストは擬アリストテレス『問題集』の中の一つの論考「思慮、知性、知恵に関する諸問題」[XXX.1]であるが、本研究においては、従来あまり取り上げられることの少なかったアリストテレスの生理学思想(『自然学小論集』の内で、『記憶について』、『睡眠と覚醒について』、『夢について』、『夢占いについて』)および倫理学思想(『ニコマコス倫理学』、『エウデモス倫理学』)におけるメランコリア概念を明らかにし、アリストテレスによるメランコリア論と『問題集』におけるそれとの思想的連関を問い直した。それらの考察を通じて、そもそも病いの状態として語られてきたメランコリア的気質が、知性の欠如という側面のみならず、知性の点で傑出した状態という二つの側面をともに保持しうることの根拠について検討した。 さらに、本年度は初期ギリシア哲学の文献研究に関して、学説誌の伝統をめぐる研究状況を紹介したコラムを執筆した。また、前年度から引き続きガレノス『ヒッポクラテスとプラトンの学説』第二分冊の翻訳も継続して行うとともに、『ギリシア・ローマ哲学』および『アリストテレス全集』の翻訳の一部分も新たに手がけ、その成果は次年度以降に出版予定である。
|
Research Products
(2 results)