2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520068
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
木原 志乃 Kokugakuin University, 文学部, 准教授 (10407166)
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Keywords | 古代ギリシア / 哲学史 / 医学史 / アリストテレス / 身体観 / 哲学と科学 |
Research Abstract |
初期ギリシア哲学および医学における身体観の思想史的展開を、知の成立の問題との関わりに注目しながら考察することが本年度の研究目的であり、その研究成果が以下の論文と翻訳である。 まず、前年度から継続した研究の成果として、古代ギリシア医学における身体的・精神的病の一つであるメランコリア概念について、特にアリストテレスの自然学的著作と倫理学的著作においてどのように受容展開されているのかを明らかにしたものが、『古代哲学研究』40号に掲載の論文「メランコリコイにおける魂の運動と知性」である。 さらにギリシア・ローマ哲学論文集であるD. Sedley(ed.), The Cambridge Companion to Greek and Roman Philosophy, Cambridge University Press所収の論文R. J. Hankinson, “Philosophy and Science"(「哲学と科学」)の翻訳を行った(校了済み2009年6月に京都大学学術出版会より出版確定)。本論文は、ギリシア医学や天文学などの諸科学を同時代の哲学と関係づけながら考察されたもので、初期ギリシアからガレノスに至るまで哲学と科学が緊張関係にあったことを踏まえ、科学的知識(エピステーメー)がどのような根拠を持ったものとして位置づけられたのか、また観察を重視する医学の立場に対して、目的論の要請が哲学の立場から行われたことの問題点はどこにあるのかなどについて検討されている。この論文が収められた『ギリシア・ローマ哲学案内』は多方面にわたる研究を視野においた論文集であり、入門書としても専門書としてもギリシア・ローマ研究の共通の基盤として意義を有したものであるといえる。またこれに加えて本年度は、ガレノス『ヒッポクラテスとプラトンの学説』第二分冊(京都大学出版)、『アリストテレス全集』(岩波書店)の翻訳も継続して行った。
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Research Products
(3 results)