2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
平泉 隆房 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (20148357)
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Keywords | 中世神道 / 前期伊勢神道 / 伊勢神宮 / 荒木田氏 / 度会氏 |
Research Abstract |
我が国における最初の本格的神道論といえる伊勢神道論の成立時期および成立事情について、従来の通説を再検討し、独自な新説を提示するための予備作業を行った。具体的には、平安後期の院政期から中世前期(鎌倉期〜南北朝期)にかけての伊勢神宮及び伊勢神道に関する詳細な年表を作成しつつある。既に一応の年表は作成していたが、最新刊の『伊勢神宮史年表』(戎光祥社)の当該部分をパソコン入力し、さらに精密の度合いを深めようとした。初年度は院政期についての作業をほぼ終えた。これは、当該期の古記録(日記)や古文書、また神宮関係史料を網羅的に収集整理し、伊勢神道史を中心に関連する主な思想史の流れが一目で理解できるように、年表のうえに諸事例を書き並べて、推移の把握の参考に供するものである。 なお、研究成果としては、金沢工業大学日本学研究所編『日本学研究』9号(平成18年12月刊)に「度会氏の二宮兼行について」を発表して、鎌倉期の外宮祠官度会氏について論及したほか、同研究所の研究会(平成19年2月開催)において「中世神道論成立についての一試論」と題する研究発表を試みた。後者では、平安後期の院政期に、度会氏が活発に東国で御厨経営に関わっており、その活動のなかに、後年の前期伊勢神道書での主張と共通するものがあること、さらに鎌倉初期の源頼朝時代には、外宮を「伊勢太神宮」と称するなど、内宮と比肩するくらいの存在を主張し、鎌倉御家人に認められていたことを論証した。これらのことは、前期伊勢神道の成立が通説より約1世紀繰り上がる可能性を示唆するものである。 また、伊勢神宮に関する研究史について、皇學館大学神道研究所主催のシンポジウム「伊勢神宮史研究の現状と課題」(平成18年12月開催)に発題者として招聘され、研究成果の一端を述べた。
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