2007 Fiscal Year Annual Research Report
中国イスラーム山東学派におけるスーフィー哲学の受容と変容の研究
Project/Area Number |
18520072
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Research Institution | Eichi University |
Principal Investigator |
松本 耿郎 Eichi University, 文学部, 教授 (00159154)
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Keywords | 来復銘 / Insan Kamil / スーフィズム / 経堂教育 / ペルシャ語文化 / 十三本経 / 存在一性論 / 山東学派 |
Research Abstract |
今年度は現地調査として前年に引き続き山東省済南市の北方の回族村石家村清真寺に残るアラビア語、ペルシャ語の写本の調査をおこなった。調査の結果、写本は59冊あり、そのほかに12冊の活版印刷本があることが確認された。写本59冊のうち23冊がペルシャ語の写本、のこり36冊はアラビア語の写本であることが判明した。アラビア語の写本は「コーラン」の写本、ハナフィー派イスラーム法学書"kitab al-wigayah"、アラビア語文法書、イスラームの儀礼解説書などで重複するものもいくつかあった。ペルシャ語の写本のなかにはアジーズ・ナサフィーの"Insan Kamil""kashf al-haqa'iq"ファリードッティーン・アッタールの"Tadhkirat al-awliya"などスーフィズム関係の図書が含まれていることが明らかになった。そのほかにも表紙の欠落したスーフィズム系統の詩集などが含まれていた。ペルシャ語で書かれたアラビア語文法書も3冊含まれている。この写本群の調査により反右派闘争により宗教弾圧がはじまるまでは、この村におけるイスラーム研究・教育の基本はペルシャ語の学習にあり、ペルシャ語を通じてアラビア語が学習されていたと推定される。またペルシャ語によるスーフィズム関係図書が数点含まれることからこの村の人々の精神生活、倫理の基本は存在-性論系統のペルシャ・スーフィー思想であったことが推定される。中国イスラーム山東学派においてはスーフィズムの学習に重点が置かれることを調査によって実際に確認できたことは今年の調査の大きな成果であるといえる。また調査の過程で、共産党革命以前に山東学派の経堂教師だった人物が済南市に存命であることがわかった。さらに、来復銘の筆者陳思の子孫も済南にすんでいることも明らかとなった。これらの人々へのインタビューが山東学派の実態をより詳しく解き明かす手がかりとなると推定される。
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Research Products
(2 results)