2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520076
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
須藤 弘敏 Hirosaki University, 人文学部, 教授 (70124592)
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Keywords | 写経 / 変相 / 東アジア |
Research Abstract |
20年度は最終年度に当たるため、これまで国内および国外で実地調査してきたデータの整理と画像資料の分析を中心に行い、あわせて過去に申請者が作成した大量のアナログ画像データのデジタル化を進めた。その結果、本研究が目的としている13世紀の日本経絵の様態とその特徴的な問題を浮かび上がらせることが可能になり、特に東アジア各国の経絵との比較研究を進める上で大いに進捗が見られた。具体的には、一見自律的に展開していると見られていた日本の経絵が平安時代中すでに東アジアの経絵から相当な影響を受けていたこと、さらに12世紀の経絵には東アジアの経絵からの直接的な影響が反映していることを確認した。 13世紀鎌倉時代の経絵では二つの展開があったことを最終的に確認できた。一つは、12世紀に完成した経絵の定型的表現が形式的に反復されていたことで、紺紙金字経にのみ見られるものでなく、慈光寺経や長谷寺経など装飾経にも共通してみられるものだが、装飾経の場合はミニアチュールとしての効果が期待できるため、こうした傾向はマイナスに働かなかった。 もう一つは、これまでの研究で注目されることのなかった、日本経絵が東アジア経絵と直接リンクしていたことである。具体的には請来された宋の版本および金字本写経に付された経典変相を直模する行為で、12世紀には外面的模写だったこの行為に積極的な意義を見出すことによって新たな表現を獲得している。しかし、その結これら経絵は国籍不明な状態となり、各地に残るそれらについて北宋や高麗などとさまざまな誤った比定がなされていることの問題を詳細に分析している。
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