2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520077
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
阿部 成樹 Yamagata University, 人文学部, 准教授 (90270800)
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Keywords | フランス美術史 / 近代社会史 / 新古典派 / ロマン派 / 個 |
Research Abstract |
19年度は、それまでの研究を受けて芸術家たちの孤立状況を生み出した社会史的条件を探り、また芸術家相互の結びつきを特徴づける関係性を、特に社会学の理論を視野に考察することを目指していた。 こうした研究の中で、まず第一に、フランス革命下の社会史的状況の重要性に重い至り、これまでの研究成果をもとに考察を深めた。フランス革命においては、その社会刷新の意図ゆえに特権団体の消滅が目指されたが、このことはさまざまな中間社団の動揺と解体を招き、美術アカデミーをはじめとする芸術家たちの団体もこれと無縁ではなかった。そうした状況を念頭におくことで、逆にこの時期に芸術家たちの自発的な集団形成が行なわれたことの意味を、社会史的な視座から読み解くことができると考えるに至った。すなわち、党派的な集まりを作り画壇に権威を振るう新古典派と、近代芸術家の孤立状況を象徴するとされるロマン派の芸術家のあり方が、実は同じひとつの社会史的流れ、すなわち個を単位とする社会編成原理への移行という状況への二種の反応と捉えられるのである。それはまた、社会からの孤立が芸術家に特有の特殊な状況ではないということでもある。これらは、従来の西洋近代美術についての理解に変更を迫る視点と考えている。 第二に芸術家相互の関係性については、模倣という契機の重要性に重い至り、模索する中で社会学者タルドの理論の応用可能性にっいて考察した。今後、この点はさらに探索していく。
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