2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520080
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 Tokyo Gakugei University, 教育学部, 准教授 (10313280)
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Keywords | 高野山 / 天野社 / 丹生都比売神社 / 舞楽 / 雅楽 / 遷宮 / 高野山東京別院 / 高野山古絵図 |
Research Abstract |
平成20年度は、昨年度に調査撮影を行った高野山東京別院伝来の四枚の古絵図の分析を中心に研究を進めた。『紀伊続風土記』『天野舞楽宝永之記』等の文献史料と照合させつつ、描かれている事象を逐一解釈する一方、9月30日〜10月3日には、丹生都比売神社境内、天野周辺、高野山壇上、奥ノ院等の実地調査を行い、古絵図に描かれている場所の比定と現況の確認作業を行った。その結果得られた主な知見は次の通りである。(1)古絵図は周到な取材を経て作成されたと考えられる。(2)高野山参詣の要所が網羅されており、関東における高野山信仰の展開に一定の役割を果たしたと思われる。(3)古絵図の景観年代は、壇上伽藍の建物から、1736年〜1760年に限定することができ、その間に行われた天野社舞楽曼荼羅供は延享2年(1746)に限られることから、製作年代は1746年以後のさほど下らない時期と推測される。(4)慈尊院の絵図に橋本御殿(紀州藩代官所)、奥ノ院の絵図に紀州徳川家塔婆が描かれていることから、製作に紀州徳川家の関与が推測される。(5)遷宮舞楽曼荼羅供の式次第と照合すると、天野宮の絵図に描かれた場面と同一の時間帯はあり得ず、舞楽曼荼羅供の部分は異時同図の技法によって華やかな場面を羅列したものと考えられる。以上の成果は、東洋音楽学会第59回大会(於武蔵野音楽大学)において発表した。 また、江戸期の天野社遷宮舞楽曼荼羅供の実態について、『丹生都比売神社史』「江戸時代の舞楽曼荼羅供」に記述し、3月28日に高野山大学で行われた『丹生都比売神社史』刊行記念シンポジウムにおいて、その成果の一端を示した。
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