2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
高松 晃子 聖徳大学, 人文学部, 教授 (20236350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 雅人 一橋大学, 経済学研究科, 教授 (80016956)
照山 顕人 関東学園大学, 法経学部, 助教授 (80237015)
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Keywords | 芸術諸学 / 洋楽受容 / スコットランド / 唱歌 / 明治期 / 音楽 / 教科書 |
Research Abstract |
本研究は、明治期の日本におけるスコットランド歌謡の受容について、そのレパートリーを調査するとともに、移入のプロセスと音楽語法に関する従来の通説を再検討するものである。2006年度は、レパートリー調査と音階理論の考察を中心に研究を行った。 レパートリー調査では、『小学唱歌集』(1881-84)から現在までに日本で出版された唱歌・音楽教科書や愛唱歌集にあらわれたスコットランド歌謡を選別して原曲を判定、さらに、19世紀から20世紀初頭に英米で出版された教科書や愛唱歌集を精査することによって、出典をある程度特定した。この作業により、スコットランドの音楽は、明治期にすでに、歌唱ジャンルだけでなく、ヴァイオリンや鍵盤楽器などの器楽ジャンルとしても浸透していたこと、スコットランド曲との表示や作詞作曲者情報が誤って記載されているものが多数存在すること、同じ旋律に複数の歌詞が付されて出版を重ねてきたことなどが明らかになった。 音階については、日本人がスコットランド旋律を好んで受容した理由として、五音音階、とくに「ヨナ抜き」音階の共有が指摘されるが、今回の調査の結果、この言説について次のような仮説を得た。『小学唱歌集』においてはその認識はほとんどなく、明治21年以降、実際に第4音と第7音を欠く五音音階曲が流行し始めた段階で感覚的な芽生えがあり、明治時代末期に「ナヨ抜き」あるいは「ヨナ抜き」というタームが生まれてはじめて真実味を帯びるようになり、それが言説として固定されたのは大正時代ではないかという仮説である。その根拠として、9曲のスコットランド曲を含む『小学唱歌集』には、全91曲中6曲しかヨナ抜き曲が見当たらないこと(そのうちスコットランド曲は3曲)、明治20年頃までは、ヨナ抜きといえども従来の日本音楽の音組織とは異なっているため歌いにくかったと考えられること、大正期の資料には見られる上の言説は、明治期の資料にいまだ確認できなかったことなどが挙げられる。
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Research Products
(5 results)