2007 Fiscal Year Annual Research Report
三善晃の作曲様式-器楽作品と声楽作品の相互流入による様式形成とその意義-
Project/Area Number |
18520101
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
楢崎 洋子 Musashino Academia Musicae, 音楽学部, 教授 (50254264)
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Keywords | 三善晃 / 作曲様式 / 器楽作品 / 声楽作品 / 20世紀音楽 / デクラメーション |
Research Abstract |
筆者の区分による三善晃(1933〜)の作曲活動の第1期(1950年代から1960年代半ばまで)を対象にした平成18年度の研究に引き続き,平成19年度は1960年代後半以降を対象に器楽作品と声楽作品の相互関係を考察した。その結果,第2期(1966年〜1971年)には合唱作品において旋律とリズムによるだけでなく,複数の声の響きと器楽による言葉のアーティキュレーションと音響化が認められ(例えば《四季に》《王孫不帰》),その手法は,第3期(1972年〜1984年)における合唱とオーケストラのための3部作(《レクイエム》《詩篇》《響紋》)の合唱とオーケストラに認められる。第4期(1985年〜1994年)における,合唱を群に分けるほかピアノを2台にする等の編成の大規模化は,第2期,第3期における声と器楽の響きによるデクラメーション手法の延長にとらえられる。第5期(1995年〜)には三善にとって初のオペラ作品となる《遠い帆》(1999)を書くが,《遠い帆》では歌唱パートが朗唱に徹する傾向にあるのに対し,合唱とオーケストラのための《三つのイメージ》(2OO2)においては,言葉の音響化に創出的なデクラメーションが認められる。また,声を伴わないオーケストラのための4部作(《夏の散乱》《谺つり星》《霧の果実》《焉歌・波摘》)においては,三善がそれまで声を用いた作品で志向していた題材,すなわち死と生の関係,あるいは個々の人間存在とそれらの関わりが,独奏楽器とオーケストラの関係やオーケストレーションに追求されている。三善が自身のオペラ作曲にさいしてヨーロッパのオペラに違和感を抱いて発言した。「オペラではないオペラ」という構想は,オペラと銘打った作品においてよりも,声と器楽を複合させた作品において言葉を想像力豊かに音響化する創出的デクラメーションとして顕現していることが浮かび上がった。
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Research Products
(2 results)