2006 Fiscal Year Annual Research Report
美術史記述における図像機能の歴史的・理論的研究ー近代フランスを中心として
Project/Area Number |
18520105
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
島本 浣 京都精華大学, 芸術学部, 教授 (30154280)
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Keywords | 美術書 / 19世紀フランス / 再絵、図版 / 印刷史 / 美術作品のエクリチュール |
Research Abstract |
本研究の初年度である平成18年4月 20世紀前半の美術書の収集と資料調査を行った。中心はパリのフランス国立美術史研究所図書館とパリ市立フォルネ図書館での10日あまりの調査である。期間は短かったものの、体系的に収集された美術書を年代的に効果的に閲覧することができた。さらに、パリの古書店等においては興味深いサンプル書を購入できた。こうした調査によって、初年度の目的である美術書刊行の流れと、そこに挿入された挿絵、図版に関する印刷形態史的歴史の外観を見通すことができた。図版を伴った美術書は19世紀が進むにつれ、その量を増していくという当然の事実を確認したのはもちろんだが、重要な発見は19世紀初頭のリトグラフの図版への導入が美術書に及ぼした影響の大きさ、さらに世紀中葉からの小口木版図版の導入が美術書の大衆化と美術作品イメージの普及にきわめて重要であったことを確認することができた。加えて、美術作品の説明文や解説文が図版の種類によって微妙に変化していくことも興味ある発見であった。 また、初年度の課題のひとつにあげた印刷技術の技術的理解に関しては、私の属する大正イマジュリィ学会の会員の協力によって、多くの知見を得ることができた。さらに初年度の付属的課題である美術史記述のエクリチュールの分析については、ジェラール・ジュネットの文体論等の研究に着手した。 初年度は文献調査を中心としたため、論文での成果発表は行わなかったが、成果の一部を繰り入れた口頭発表を、日仏美術学会で2度(7月、12月)行ったことを付け加えておく。
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