2007 Fiscal Year Annual Research Report
イコノロジーの再生-イメージ解釈の包括的な基礎理論をめざして-
Project/Area Number |
18520110
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 哲弘 Kwansei Gakuin University, 文学部, 教授 (60152724)
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Keywords | イコノロジー / ヴァールブルク / 美術史学 / ムネモシュネ / 受容美学 / リーグル / 装飾文様 / 矢代幸雄 |
Research Abstract |
平成19年度は、申請書の「研究目的」で挙げた第二の研究課題、すなわち「美術史や、とくに最近の視覚文化研究に見られるイメージ解釈の理論的試みをイコノロジーに取り込むこと」に取り組んだ。イコノロジーの新たな可能性を求めるために、いわゆる「イコノロジー」を超えた、過去や現在のさまざまな方法論の検討を行い、その長所を取り込んでいく作業がこれにあたる。また本年度の実施計画では、これらの方法論を、(1)解釈主体に関わるもの、(2)解釈対象に関わるもの、(3)解釈や解釈対象の外側にあって解釈行為に関わるものという3つのグループに分けておいた。 まず(1)については、矢代幸雄による、日本美術の「感傷性」への言及について分析を行い、矢代による解釈に対する当時の「叙情的」な芸術思潮からの影響関係を明らかにした。また、受容美学を美術研究に取り入れたことで知られるケンプによる北斉の『富嶽百景』への解釈についても、学会誌『美学』の「新刊紹介」(230号、2007年9月、87頁)において、その解釈論としての意義を指摘した。次に(2)については、リーグルによる「様式論」や「記念物保護論」のテクスト分析を行い、装飾文様の伝播や、文化財保護についての基礎理論の重要性を確認した。来年度に公刊を予定しているヴァールブルクの写真集『ムネモシュネ』に掲載されている画像の分析も、このグループに関係するものである。最後に(3)についても、いくつかの調査やその報告を行った。その代表的なものは、2007年10月に北海道大学で開催された美学会全国大会シンポジウムでの、アイヌの装飾文様についての議論への参加である。 また、これも予定通り7月には、トルコのアンカラで開催された国際美学会議で矢代についての研究発表を行った。発表では、矢代をめぐる単なるモノグラフィーとしてではなく、今回の研究課題一般についても、欧米やアジアを始めとする世界の多くの研究者たちとの有意義な意見交換を行うことができた。
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Research Products
(2 results)