2007 Fiscal Year Annual Research Report
三島由紀夫のアジアにおける受容と作品に見られるアジアイメージの形象
Project/Area Number |
18520120
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
久保田 裕子 Fukuoka University of Education, 教育学部, 准教授 (30262356)
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Keywords | 三島由紀夫 / 翻訳 / 中華人民共和国 / 東南アジア |
Research Abstract |
1、三島由紀夫作品の被翻訳書目の作成(平成18年度からの継続的調査) 平成20年1月に中華人民共和国の復旦大学、上海図書館において三島由紀夫および日本近現代文学の中国語訳テキストに関する調査を行い、本研究を通して韓国・中国における現地調査を完了することができた。従来、三島の被翻訳テキストの出版状況としてはアメリカ・ヨーロッパに関する調査が中心であったが、台湾国家図書館の現地調査結果とも照合して現状を分析した結果、欧米、特にアメリカとは異なる現代日本文学の翻訳を通した受容のあり方が明らかになった。 2、『暁の寺』『熱い絹』と戦後日本文学に表れた東南アジアのイメージ表象の分析 前年度は三島の『暁の寺』におけるアジアイメージの表象分析を行ったが、今年度はそれに加え、松本清張の『熱い絹』と比較しつつ分析した。戦後文学の東南アジアをめぐるイメージ表象は、太平洋戦争前夜の〈南洋〉に対するまなざしに加えて、1960年代以降の高度経済成長とアジアにおける経済的進出に影響を受けた新たな国際関係が影響している。詳細な現地踏査を行った両作家の創作の過程をたどり、国際的視野の広がりを持った戦後文学の新たな側面について考察した。 3、三島由紀夫作品の翻訳をめぐる受容とアジアという表象についての分析と考察 1の調査結果によれば、台湾・中国・韓国のそれぞれの国内事情及び日本文学・文化の受容のあり方が翻訳テキストの選択や出版状況などに反映している。さらに2の研究を通して『暁の寺』『熱い絹』などのテキストに描かれた東南アジアをめぐる表象は、戦後日本社会が対峙した政治的・経済的問題を反映している。1と2の研究成果を総合的に分析することによって、日本からみたアジアというイメージ表象とアジア諸国の日本文学の受容のあり方という相互の文化・文学の受容の一側面を双方向的な視点を通して考察することができた。
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Research Products
(3 results)