2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
石田 仁志 東洋大学, 文学部, 助教授 (80232312)
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Keywords | 女性文学 / 現代文学史 / 家族 |
Research Abstract |
本年度は、日本の戦後の文芸雑誌を中心に、女性作家の小説の中から家族に類する題名に冠する作品及び主要なテーマとした作品を抽出し、「家族」に関する意識、表現、評価などのあり方とその変遷を分析した。対象とした主な雑誌は、「藝苑」「新小説」「小説新潮」「女性改造」「新潮」「人間」「婦人」「婦人倶楽部」「婦人文庫」「文藝春秋」など。本課題の3年計画のうちの第一期に当たるため、時代的には終戦直後の1945年〜60年を対象とした。また、分析対象となった主な女性作家としては網野菊、大田洋子、円地文子、大原富枝、佐多稲子、芝木好子、中里恒子、林芙美子、平林たい子、真杉静枝、宮本百合子、森三千代、吉屋信子など。なかでも、この時期は戦前から活躍していた女性作家たちが旺盛な作家活動を展開した時期で、佐多稲子や大原富枝、中里恒子、林芙美子、真杉静枝、宮本百合子らの作品に家族や家庭、さらには戦後の女性の生き様を描いた作品が多く見られた。 第一期の特徴としては、全般に恋愛や結婚など依然として「家」の意識に縛られている女性の生き方が見られた一方で、佐多稲子や林芙美子、宮本百合子らの作品にはそうした規範的な家族意識を揺さぶり、より自由な女性の生き方を求めんとするものも見られた。家族というものを解体しあるいはそれを否定する意識も胚胎している。しかし、その一方で円地文子や芝木好子の作品には、戦前的な家父長的家族意識を相対化しつつも、現実にはその中で苦しみながら生きていかざるを得ない女性の姿も見られ、一概に戦後的な個人主義・自由主義的な意識の中での家族意識の崩壊へとは直結しない意識のあり方が捉えられる。性意識については、家族意識ほどは作品の中からは読み取れない。来年度は、第2期(一九七〇年代〜八〇年代)が対象となるが、当初に予想した意識変容とは異なる部分が見受けられるので、その点にも留意したい。
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