2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520135
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
石田 仁志 Toyo University, 文学部, 准教授 (80232312)
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Keywords | 家族 / 女性文学 / ジェンダー |
Research Abstract |
本年は当研究の2年目に当たるため、昨年に引き続き、1970年〜90年代の文芸雑誌を中心に現代女性作家の作品を分析し、そこから読み取れる家族の姿、作中人物における家族意識のあり方、人間関係の展開を中心に考察を続けた。なお、本年度は初出雑誌だけではなく、所収単行本も対象とした。主な対象作家は、円地文子、倉橋由美子、大庭みな子、富岡多恵子、三枝和子、芝木好子、津島佑子、干刈あがた、永瀬清子、向田邦子、高橋たか子、増田みず子、山田詠美、吉本ばなな、笙野頼子、川上弘美など。 70年代以降は、安保闘争後の社会変化を反映して、家族意識は次第に希薄化の傾向を示している。円地、大庭、富岡らが中年以降の夫婦における家族の変化を個人の内面的な問題として描き出している。それに対して、70年代後半〜80年代に登場する津島、干刈、向田らは、高度経済成長の終焉、不景気、家庭内暴力など、日本社会の価値観の変質を反映し、核家族化の進行による家族意識の違いを親子の間の世代間の隔絶として捉える傾向がうかがえる。それが増田、山田、吉本、川上といった80年代後半以降に登場した作品では、バブル経済の隆盛と崩壊、いじめ、ひきこもり、DVなど日本社会の光と影が深まり、少子化、核家族化がさらに進んだことと連動するかのように、〈家族〉という関係性そのものへの懐疑が表出される傾向が見られる。 来年度は2000年代の作品を分析したうえで、3年間の研究をまとめる。
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