2008 Fiscal Year Annual Research Report
水戸藩と柳河藩を中心とした近世前期における知識人の交流と出版文化の研究
Project/Area Number |
18520136
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
倉員 正江 (長谷川 正江) Nihon University, 生物資源科学部, 教授 (70307817)
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Keywords | 国文学 / 出版文化 / 水戸藩 / 柳河藩 / 熊本藩 |
Research Abstract |
本年度は元禄期における軍書編纂を廻る各藩の動向を追究する目的で、元禄十年序刊『本朝武家高名記』(以下『高名記』)に関連する研究と、軍書『九州記』の校訂を務めた性天禅旭の文事についての研究を発表した。 本書の著者樋口好運は本職は大坂在の小児科医、所謂町医者であったが、『大日本史編纂記録』や貝原益軒・竹田春庵らの日記類に登場しており、軍書『高名記』の編纂のための史料探索のため諸家に出入りしていたと見られる。本書の記事のうち、「里見八犬士」「尼子十勇士」等武家名数を集成した箇所に注目し、『書言字考節用集』収録語彙の当該箇所との比較を通し、『高名記』が先行する可能性が極めて高いことを考察した。また『節用集』の作者槙島昭武も軍書の著作があり、二人の具体的接点は未詳ながら、両書は極めて近似した 成立事情を示している。従来漠然と“当時の知識層"とされたこの時期における軍書作者の実態も、かなり明らかになりつつある。 性天については熊本藩主細川家の菩提寺泰勝寺の四代目住職を務めた妙心寺派の僧侶であるが、従来伝記等未検討であった。今回熊本県立図書館に伝存する平間長雅筆「泰勝寺縁起」(仮称)なる未紹介写本と、龍谷大学図書館蔵写本『性天和尚妙心入寺儀注』の比較検討から、以下の新知見を得た。すなわち幼少期から藩命により妙心寺で修行したこと、元禄十一年に妙心寺に歴住した際の半年以上にわたる手続等の事情、当日の式次第と天皇に謁見した事実等である。さらに長雅との親交からも窺えるが禅僧には珍しく、性天は和歌に巧み で、細川家と姻戚関係の深い八代城主松井家一族と和歌を通じた交流が見られる点である。
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Research Products
(2 results)