2009 Fiscal Year Annual Research Report
水戸藩と柳河藩を中心とした近世前期における知識人の交流と出版文化の研究
Project/Area Number |
18520136
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
倉員 正江 (長谷川 正江) Nihon University, 生物資源科学部, 教授 (70307817)
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Keywords | 柳河藩 / 安東省菴 / 立花戦功録 / 水戸 / 彰考館 / 参考源平盛衰記 |
Research Abstract |
本年度は学術論文二本を発表した。 柳川古文書館には安東家関係者と通俗軍書『本朝武家高名記』の著者樋口好運との確執をうかがわせる書簡が残存する。断簡も多く不明な点も多いが、同書「感状巻」収録の立花宗茂の感状の正確さをめぐって、校正の杜撰さから柳河藩と好運の間に思惑違いがあったものと推測される。また柳川古文書館に伝存する二種の写本『立花戦功録』は、安東省菴が、豊臣秀吉が宗茂宛に向けて発給した感状を集成して、その伝記と顕彰を狙った著作である。従来ほとんど言及されないが、朝鮮出兵時における宗茂の活躍ぶりの描写が『太閤記』において不十分であることに対する飽き足らなさが執筆動機と見られる。九州の地において柳河藩が早い時期から出版に強い興味を抱いていたことも注目される。 また『大日本史編纂記録』から、彰考館における『参考源平盛衰記』の編纂事情について考察した。『大日本史』編纂に伴う参考本のうち、唯一未刊に終わった作であるが、光圀の意志を受け当初から刊行を目指した編纂物であったが、校訂作業を請け負う人材難と版下清書にも人材を得られず、『大日本史』を最優先する過程で、出版を断念せざるをえなかった事情について考察した。清書本を幕府に献上したあとも出版計画は再燃したが、結局写本のまま流布した事実も浮上した。資料の翻刻については現所蔵者の京都大学文学部古文書室の許可を得た。
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Research Products
(2 results)