2006 Fiscal Year Annual Research Report
医事的教養と宮廷医の活動ー中世医事書、特に医事説話をめぐってー
Project/Area Number |
18520143
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
美濃部 重克 南山大学, 人文学部, 教授 (90065475)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 雅雄 南山大学, 人文学部, 教授 (70148295)
辻本 裕成 南山大学, 人文学部, 助教授 (90249920)
中根 千絵 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (80326131)
|
Keywords | 宮廷医 / 医事 / 舶載書 / 中世文学 / 説話 |
Research Abstract |
3年計画の一年目である本年度は、資料の発掘と収集に力を入れた。現在、三つの分野で研究が進んでおり、以下、本年度の実績をそれぞれの分野別に述べる。 1 「伝屍病」の研究 三井寺法明院、武田科学振興財団杏雨書屋などを訪問し調査を行い、「伝屍病」なる概念の理解と、その対処法の分析を行った。「伝屍病」に関わる文献の学術的な紹介を行うべく、『伝屍病肝心鈔』(杏雨書屋蔵)について原典に忠実な翻刻を作成し、それを通じて、「伝屍病」の病としての特殊な捉えられ方と、それと関わって宗教や医術によってどのような対処法が取られたかを分析した。同論文は成稿を終え、まもなく発表の予定である。 2 「疳の虫」の研究 「疳の虫」という言葉は、江戸時代には、医師の間だけではなく一般の人々の間でも広く使われていた。近世の医事的教養の実態や、中世医事書の記述が近世に庶民にどのように浸透していたかを知るためにもこの研究は意義あるものと思われる。この問題とかかわって、中国医学書に於ける「疳」概念と日本の「疳」概念の差異、日本に於ける「疳」と「癇」の混交の問題などを論じた論文を発表した。 3 『医談抄』『医家千字文注』の研究 鎌倉時代の医家、惟宗氏の人々になる両書物についての注釈的研究を進めている。『医家千字文注』が、どのような全体的構成を持つか、どのような書物をモデルとして書かれたか、などの基本的な問題については明らかに出来た。その成果は論文として2008年度中に発表する予定である。
|