2008 Fiscal Year Annual Research Report
医事的教養と宮廷医の活動-中世医事書、特に医事説話をめぐって-
Project/Area Number |
18520143
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
美濃部 重克 Nanzan University, 人文学部, 教授 (90065475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 雅雄 南山大学, 人文学部, 教授 (70148295)
辻本 裕成 南山大学, 人文学部, 准教授 (90249920)
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Keywords | 『医家千字文註』 / 惟宗時俊 / 『千字文』の享受 / 中国医書 / 宮廷医 / 医事的教養 / 西洋医学の導入 / 脳・神経の知識 |
Research Abstract |
本年度は『医家千字文註』の研究に精力を注いだ。一部科研費を利用して各地の文庫に赴き諸本の調査を行い、また月2回(休暇中は4回)程度のペースで輪読会を行い、本文の整定と訓読、解釈、出典の探求と出典との比較検討などを行った。あと数段を残すところまで行うことが出来、その成果は遠くない将来に注釈書として出版される予定である。また、その一端については分担者である辻本が、「11」の欄に示した論文に発表し、まとまった先行研究のほとんどない該書に関して、諸本の調査と現存写本の評価を行い、どのように撰者が千字句を作成していったかを考証した。現存写本は、時俊写の原本の面影をかなりよく残すと思われ、版本や活字本ではそれが十全にはわからない、文字の重複なく千字句を作成するために時俊の行った様々な苦労と工夫の様が明らかにした。千字句は中国医書の引用からなる注文の標題的な役割を果たすものであり、この書の眼目は注文にあり、初心者向きの入門書というのとは、やや性格を異にしており、むしろ本書は衒学的といってもよいような高度な作品であることがわかった。 また、医事的教養の展開という点においては、江戸から明治にかけて、西洋医学の導入、特に脳や神経に関わる知識の浸透によって、人々の旧来の医事的教養が、どのように変容していくのか、また、どのように生き残っていくのかを考えた。その成果については2009年度中には論文をして発表する予定である。
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