2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520155
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
小助川 元太 Kure National College of Technology, 一般科目, 准教授 (30353311)
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Keywords | 画題 / 後素集 / 帝鑑図説 |
Research Abstract |
1.3年間の基礎的調査の中で,『後素集』の画題解説部分を見直す作業をしているうちに,画題解説部分に(1)図像のコード化を目的としたもの,(2)絵画の背景となる故事の解説を目的としたものという二種類の位相があり,さらにそれらを組み合わせて分類すると,約7種類のパターンがあることが分かった。このことについては,次年度に新たな研究課題「中世後期成立の百科全書的テキストに関する基礎的研究」が基盤研究(C)で採用されたため,引き続き調査を続けてまとめていきたい。 2.『後素集』に『帝鑑図説』が利用されていることから,『帝鑑図説』の日本における受容の問題を考えるために,『後素集』成立から間もない時期に出版された和訳本『帝鑑図説』を所属する高専の紀要に翻刻紹介した。その作業過程で,和訳本『帝鑑図説』の挿絵が秀頼本『帝鑑図説』とほぼ同じであること,和訳を行ったのは,それなりに漢籍に造詣の深い人物であることが分かってきた。 3.2008年9月20日から23日にかけて,イタリアのレッチェで開催されたヨーロッパ日本研究協会(EAJS)の国際会議で,「The Kososhu and its Commentaries」と題する発表を行った。これは,それまでの研究成果をまとめたもので,主に『後素集』の『帝鑑図説』を利用した部分に見られる独自表現が,同時代の抄物や軍記などに引用される漢籍故事と一致するという点を踏まえながら,当時の公武の知識人の持つ学問的素養が絵画の制作者たる絵師やその仕事に反映されている可能性を論じたものである。会場の反応が良かったため,帰国後,論文の形にまとめ,『国語国文』(京都大学国語学国文学研究室)に投稿したところ,掲載が決定した。(2009年6月掲載予定)
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