2007 Fiscal Year Annual Research Report
室町期を中心とする天台宗寺院の学芸に関する基盤的研究
Project/Area Number |
18520156
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
齋藤 真麻理 National Institute of Japanese Literature, 文学形成研究係, 准教授 (50280532)
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Keywords | 説話 / 仏教 |
Research Abstract |
平成19年度は、前年度に引き続き、叡山文庫をはじめ天台宗関連資料を集積している文庫の調査を行い、法華経注釈書類について考究を進めた。奥書所見の談義所のデータを集積することにより、それらが成立してゆく過程を考察するための準備を進行中である。こうした談義所成立の背景には、地理的な条件が大きく左右したと思われるが、本研究によるデータの整備を通し、街道・海道との密接な関連性を抽出できるものと思われる。 それと並行して、天台僧の学芸の実態を把握すべく、調査対象を内典に限定せず、天台僧が活用した外典の類をも視野に入れることとした。天台宗の学僧はしばしば自ら著した法華経注釈書に多くの和歌・漢詩文を引用するが、そこには中世に成立した類題集に所見の和歌も見出される。従って、中世最大の類題集である『夫木抄』に注目し、叡山文庫などに伝存する伝本を調査した。この叡山文庫本『夫木抄』は叡山の塔頭、浄教坊の旧蔵書である。冊末には本書を書写した学僧の名が記載されており、従来は「實吉」と判読されてきた。しかし、これはおそらく、浄教坊の第一世「實善」と読むべきであって、叡山内でも屈指の学問所であった「浄教坊」の学芸の一端を伝える貴重資料であることが判明した。併せて、實善署名のある外典資料として、他に漢詩名句集『啓蒙対偶全集』なども伝存することが明らかとなった。こうした成果は『夫木和歌抄 編纂と享受』(後出)に発表した。
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