2006 Fiscal Year Annual Research Report
メアリ・ウルストンクラフトに見られる女性と自然の相互隠喩表象の研究
Project/Area Number |
18520163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石幡 直樹 東北大学, 大学院国際文化研究科, 教授 (30125497)
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Keywords | 英文学 / ロマン主義 / 自然観 / ジェンダー / フェミニズム |
Research Abstract |
平成18年度はウルストンクラフト、英国ロマン主義と自然観、環境批評などに関連する図書・資料を購入して考察を加えた。 本研究は、研究代表者による関連著作や資料の分析と解釈を主な方法とする。直接の研究対象は『北欧紀行』となり、その研究活動の一部として、同旅行記の翻訳に着手し、現在のところほぼ全体の下訳を終えたところである。著作と資料の分析以外にも、国内・国外に資料収集を目的とした出張を行った。平成18年8月には、英国グラスミアで開催された、ワーズワス夏期会議で講演をするとともに、イギリス、ドイツ、日本の研究者と情報の交換を行った。また、ウルストンクラフトの自然観において、重要な位置を占める「ピクチャレスク」の概念を検証するため、絵画を模した庭園であるStourhead Gardenに出向いて、実際の風景を写真に収め、資料を収集した。10月のイギリス・ロマン派学会(鳥取大学)では、『北欧紀行』翻訳に関して、国内の研究者から助言を求めた。 男は母性あってこその再生産の原理を直観し、それが途絶えることを無意識に恐れ、自然の中にそれを保証する表象を見いだそうとした。同時に、その恐れの不可知の根元である「女」を忌避し嫌悪し抑圧した。個体ではなく種としての肉体の消滅の恐怖が、自然のなす生/性の営みを希求させ、その生への願望の凝集したものが「女としての自然」の表象であると考えられる。 本研究では、このような「女としての自然」あるいは「自然としての女」の隠喩表象を、女権論者ウルストンクラフトの作品中から抽出し、ウルストンクラフトの女性論研究とロマン派的近代自然観研究の融合を試み、それらの理解に新たな光をあてる分析を行っている最中である。
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