2008 Fiscal Year Annual Research Report
モダニズム芸術における米ソ文化交流の軌跡と黒人知識人の中心性
Project/Area Number |
18520180
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
新田 啓子 Rikkyo University, 文学部, 准教授 (40323737)
|
Keywords | アメリカ合衆国 / ソヴィエト連邦 / 黒人 / モダニズム / 近代化 / 左翼思想 / アメリカ共産党 / 大衆化 |
Research Abstract |
本研究の中間地点にあたる今年度は、これまで収集してきた史料の意味をより広いモダニズム芸術史の中で考察すべく、概念化の作業を集中して行った。まず前半には、アメリカ文化の大衆化・近代化が招く思想や芸術の低迷に警戒を強めた同時代の文芸批評家の著作を分析し、彼らが黒人と左翼政治を結びつけながら、芸術や文学の社会的意義をどう担保するかについて議論を交わしていたことへの分析を進めた。一方でヨーロッパの芸術表現の停滞を打開するものと期待された黒人芸術であるが、黒人知識人たちの方は、みずからの民族芸術が近代の主流に合流し、承認を得るための方法論を模索していた。そのための一つの試みがロシア芸術思想への傾倒であるが、アメリカのモダニズム批評家と黒人知識人は、そこでひとまず、左翼思想で結ばれた。年度前半には、この点についての関連史料を紹介・角説する論文連載(『英語青年』誌上)を進めることにより、文献整理と概念構築を推進した。また、7月と8月の国際研究集会において、その成果を口頭発表した。 年度中盤から後半にかけては、前半の作業を続けつつ、米国ニューヨーク、ボストン(9月)、同サンフランシスコ、バークレイ(12〜1月)に出張し、当該研究についてアメリカの研究者と対話すると同時に、さらなる史料調査を行った。今年度の調査対象の一つは、アメリカ共産党と黒人知識人の関係であったが研究はさらに、別様の方向性での進展をみた。それは、いわばソ連経由で、1930年代の日本にも影響を与えたアメリカ黒人文学者の存在である。このテーマに関しては、アメリカにおける討議でも多くの関心を集めたがゆえ、2、3月の研究総括時には集中的に考察され、アメリカで発表される英語論文の準備が進められている(すでに議論のあらましは、10月の日本アメリカ文学会全国大会で発表済みである)。
|
Research Products
(17 results)