2009 Fiscal Year Annual Research Report
モダニズム芸術における米ソ文化交流の軌跡と黒人知識人の中心性
Project/Area Number |
18520180
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
新田 啓子 Rikkyo University, 文学部, 准教授 (40323737)
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Keywords | アメリカ合衆国 / ソヴィエト連邦 / ハーレムルネサンス / 黒人 / モダニズム / ラングストン・ヒューズ / ウィリアム・フォークナー / 労働 |
Research Abstract |
本研究の最終年度にあたる平成21年度には、早速その初盤から、先立つ3ヶ年にわたって考察してきた諸問題を、以下、二つの重なりあう問題系としてまとめることに専念した。第一に、1)政治的意識、2)芸術的卓越性の探究、3)文化的越境というモダニズム文学・芸術最大の特徴が、黒人文化の中に具体化される様式および、それが米ソ文化交流の特徴の一端を成しているという事実、さらにはそれに関する活動が孕んだ困難を、Langston Hughes, Richard Wright, W.E.B.DuBois, Ralph Ellison等の著作や社会的活動の中に詳らかにした。そして第二には、白人主流作家(Henry James, Mark Twain, Jack Kerouac, Gertrude Stein, Djuna Barnes, F.Scott Fitzgerald, William Faulkner等)の人種観を具体的な作品に即して明らかにしながら、対する黒人作家・思想家が、文学という手段をもって政治に介入しようとすることの意義を、比較論的に評価・考察した。これらの論考は年度を通じ、主として、ウェブ版英語英米文学専門誌『Web英語青年』における連載招請論文として体系的に掲載されるとともに、10月の日本ウィリアム・フォークナー協会全国大会シンポジウムにおいて口頭発表された。 一方、年度中盤には、前半期の論文執筆を通してさらなる検証の必要性が明らかになった史料を収集するため、ノースカロライナ大およびデューク大図書館での補足的調査に赴いた(9月)。ここでは主に、1930~60年代の黒人労働運動に関する記録を入手したが、ここからさらに、1920年代以降の黒人知識人の共産党への具体的なコミットメント、ならびにソ連渡航の意図と背景が明確となった。それらへの検討を個別に進めることにより、本研究最大の課題に一つの答がもたらされた。それはすなわち、ハーレムルネサンス期から公民権運動期を生きた黒人によるソ連への期待は、象徴的な形で、ニューディール期以降の南部経済問題の解決と、そこにおける黒人労働の役割を、争点化していたということであった。
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Research Products
(15 results)