2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代初期英国における放浪文学と社会的変動との関連性にっいての研究
Project/Area Number |
18520190
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
滝川 睦 Nagoya University, 文学研究科, 教授 (90179573)
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Keywords | 近代初期英国 / 放浪文学 / 社会的変動 / 国王の行幸 / スペクタクル / 悪漢文学 / 虚実皮膜 / 社会的エネルギー |
Research Abstract |
本年度の研究業績は、近代初期英国における放浪文学と社会的変動との関連性について、Shake-speareのKing Learなどの劇作品や、叙事詩を分析することによって、以下の諸点を解明したことである。 1.King Learにおける王一行による荒野の彷徨がそうであるように、近代初期英国の放浪文学においては、放浪のパラダイムのひとつとして、同時代の国王による行幸(progress)が存在したこと、そして放浪文学において描かれる風景や人物は、行幸のさいに国王が通過する空間に配置されるスペクタクルがその原型になっていること。 2.Patricia FumertonがUnsettled(2006)において再現してみせた、近代初期英国を漂泊していた女性たち(masterless women)が、All's Well That Ends Well(1604-05)やKing Lear(1605-06)あるいはThe Faerie Queene(1590、1596)などに描かれた女性像や女性化した男性像の原型となっていること。 3.Thomas DekkerのThe Belman of London(1608)やο per se ο(1612)などの、近代初期英国を活写している悪漢文学(the Rogua Literature)に登場する悪漢=放浪者(Abraham-man、abram cove)が、King Learはじめとする放浪文学において再表象されていること、そしてその再表象が、当時の虚構世界と現実の間に環流していた、虚実皮膜の様態を出現させる社会的エネルギーの存在を証明していること。
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