2007 Fiscal Year Annual Research Report
シェイクスピア演劇における航海とナショナリズムに関する考察
Project/Area Number |
18520195
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣田 篤彦 Kyoto University, 文学研究科, 准教授 (40292718)
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Keywords | 英文学 / シェイクスピア / ナショナリズム |
Research Abstract |
前年度はThe Comedy of Errorsを中心として研究を進め、この劇における航海とナショナリズムの主題を考察する際には『オデュッセイア』に登場する、毒薬で男を獣の姿に変える魔女Circeとその文学的伝統が重要であることが確認された。本年度はこの成果に基づいて、Periclesに関してCirceを取り巻く様々な伝統との関係を考察した。特にMarinaが海賊にさらわれ、売られてきたMytileneの売春宿で客の男たちを改心させる場面に着目し、この場面におけるMarinaをCirceと比較した。 Circeは性的魅力によって男性を骨抜きにしてしまう魔女として描かれてきた伝統があり、貞淑な乙女であるMarinaは性的に積極的であるCirceとは対極的な存在であるように見える。しかしながら、男たちからその性的能力を奪っている点で、MarinaはCirceの伝統の中に位置づけられる可能性が明らかになった。この研究は西洋文学において繰り返し現れてくるCirceの伝統に新たな側面を付け加えるものである。この内容の一部を平成19年4月に行われたアメリカ・シェイクスピア学会年次大会におけるセミナーにて発表し、さらに現在論文として出版を準備している。 上記に加えて、The Comedy of ErrorsとPericles両方の舞台となるEphesusを初めとする東地中海地域の都市国家が初期近代イングランドでどのような特徴を持つ場所として認識されていたかを検討し、この点に関して新しく得られた知見を含む二年間の研究成果を論文"Circes in Ephesus: Fragile' National' Identity in The Comedy of Errors"としてまとめた。この論文は本研究課題の研究成果報告書に所収される。
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Research Products
(1 results)